ありふれた恋でいいから
結婚って。

誰よりも好きになった人が、誰よりも私を好きになってくれて。
愛し愛されることが万事を繋いでくれるものだと思ってた。

もちろん、この歳になってそんな夢や絵空事を信じてた訳じゃない。

好きな気持ちや互いを尊敬する気持ちを保ち続けるために必要なものが、愛だけじゃないってことぐらい、薄々分かってはいて。

そしてそれが慶介さんの纏う条件なら、きっと満たしてくれるだろうということにも私は気付いていて。

けれど、彼との将来をそんな打算的な考えで見てしまう自分にいささか幻滅していた。

でもそんな自分はきっと世間用に繕った体面的なもので、私の本心は違うところで迷っていたんだ。


……区切りを、付ける時は今だ。


私はずっと。
なんだかんだ理由を付けながら。
慶介さんを好きだと想う自分の中の、もう一つの想いと密かに葛藤していたんだ。


< 85 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop