ありふれた恋でいいから
ぴくりと反応した畑野くんの腕が私の手をそっと握り返す。

「……須藤、」

立ち上がって私の髪を優しく撫でる彼の優しい掌と私を呼ぶ声色に、全身でドキドキした。

「好きだよ」

付き合って1ヶ月。
この先に起こるだろうことを期待してなかった訳じゃない。

意思を込めて見つめられた瞳に促されるように瞼を閉じれば。
ゆっくりと頬に触れた彼の手の温かさと、柔らかく、でも少しだけ冷たい唇の感触。

嬉しくて、嬉しくて、幸せ過ぎて。

もしこの瞬間を幸せと呼ばなかったら、私はもう幸せには巡り合えないかもしれない、なんて。
このまま時が止まればいいと願わずにはいられなかった。
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