ありふれた恋でいいから
ふと前方を見れば、玄関前には少しずつ人だかりが出来ていて、離れていても事態の緊急性が感じとれた。

普段、診療時間内の対応を主とする私たちにはあまり遭遇することのない突発的な状況。

勿論、こういうケースに備えて、医療従事者として緊急時の対応訓練はこれまで何度も行ってきたものの、いざ実際に起きてしまうと頭の中が軽くパニックになって思考が空回りする。

――落ち着け、いつも通りに。

自分の中でそう言い聞かせながらストレッチャーのある場所へ走り、足でストッパーを外すと。

「須藤さん、一緒に押して行って!」
「はい!」

後ろから来ていた看護師に促されてストレッチャーの後方を押しながら自動ドアを潜り抜けた。
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