軍平記〜女剣客、一文字〜
鼎秀峰は火原一騎が来るのを待っていた。
柊冬は島の様子を探っていた。
「まだ、来ないのか。」
鼎は呟いた。
恐らく何らかの異変が起きて、才原はやられた。
火原は尚も何者かと戦っている。
この近辺に一切の動物の気配は感じ取れない。
「一体、この湖には何が居るのだ・・・。」
火原、才原の二人はもはや骸と化し、追うことは出来ない。
二人が居た島は大蜥蜴が食事を終えたあと、又、静寂に包まれた。
二人の到着に希望を見出だせない鼎と柊の二人は、師団を追うことに決めた。
しかし、二人が居る島の周りには更なる脅威が待ち構えている。
柊が水面に近付いた時、島を巻き込む程に長いムカデの存在を認識した。
「鼎!島を囲むように一匹のムカデが居るぞ!!」
「なにっ!ムカデが!?そんなに大きいムカデが居るのか!」
鼎と柊の二人は、刀を構え、丘の中心に戻る。
ざざざざざざ・・・。
不気味な音が聞こえ出す。
島を囲む程に大きなムカデが、鎌首をもたげ現れた。
口から毒を吐き出し、二人を襲う。
瞬時にかわし、刀を体に降り下ろし体の繋ぎ目を切り落とす。
ズバッ!!
切り離されたムカデ。
前と後ろが切断され、地面に叩き落ちる。
鼎はムカデの目に一撃を加え、つき貫く。
ギュルギュル!!
不気味な声を上げて動かなくなった。
すると、ムカデの切断した部分から顔がメリメリと現れ、更に二匹に増え、二人を襲う。
「な、なんとしたことだ!」鼎も柊も慌てる。
身軽になったムカデは凄まじい速さで二人に襲い掛かる。
鼎は乱舞し、ムカデを切り刻む。
切り刻まれたムカデは更に増殖し、切った数だけ増える。
節ごとに増えたムカデは、切られる事に俊敏さを増す。
再生能力は凄まじく高い。
柊が切ったムカデも同じように増えている。
「なんだ、この生き物は!!」
30匹以上に増えたムカデは、八方から二人に襲い掛かる。
切り払っても襲い掛かるムカデ。
柊の足に食らい付いた。
「う、うぐぐぐ!」
痺れるような激痛が、やがて意識を奪う。
「柊!しっかりしろ!!」
鼎は呼び掛ける。
乱撃を繰り出す鼎も、もはや限界だ。
「やむを得ない、湖に飛び込むか!」
鼎はムカデを払いながら琵琶湖に飛び込んだ。
夢中で泳ぐ。
ムカデは柊に群がる。
粘液を吐き出し、動けなくして食らい付いた。
鼎は、振り向かず一心不乱に泳ぐ。