軍平記〜女剣客、一文字〜
将校達の夏
齢十にして天帝を継ぐ。
天帝いろはは、朝廷に入る。
宰相として政務を受け持つのは舞鶴法王(まいづるほうおう)。
出家し、僧になったが、いろはの後見人として朝廷に戻った。
前天帝の弟であり、いろはの叔父にあたる。
御前試合において一文字凛を武芸、知略共に首席近衛師団長に抜擢したのは舞鶴法王である。
帝都は新しい天帝即位に伴い、勢力が二手に分かれていた。
南北に別れた都は、謀略渦巻く伏魔殿と変貌していた。
北に現在の帝都。
南に政争に敗れ復権の機会を狙う山城上皇(やましろじょうこう)の本拠がある。
首席近衛師団は、南の動きを警戒し、天帝を守護するのが役目である。
一文字凛はこの政争で、父親を失っている。
山城上皇が率いる山城忍軍と、一文字菊水(いちもんじきくすい)は、死闘を繰り広げ、山城忍軍壊滅と引き換えに、一文字菊水も力尽き、倒れた。
結果、力を失った山城上皇は失脚し、父親を失った凛は、舞鶴法王の庇護を受け、天帝いろはの侍女として仕えさせた。
都は不穏な空気を溜め込んでいた。