レトロな時代のピュア物語
 女性はそう言って下を見ると、そこには大勢の人が集まっていた。その光景を見るやいなや女性は慌てふためき降りる足は小走りになった。
「待て!  そんなに慌てると危ないぞ! ほら……あっ」中年のスーツを着た男がそう言った直後、女性は屋根瓦から足を滑らせた。
「きやぁぁぁーーー」
「わあぁぁぁーーー!」辺りに悲鳴が飛び交った。
「きやぁぁぁぁぁーーー!」
女性は叫びながら落ちていく。その途端、落ちていく女性と正反対に空へ多くの鳩が飛び立った。
ドスン。
地面に落ちる寸前、鈍い音がした。辺りが騒然としているなか地面の上の何かが女性の身体を守ってくれたようだ。落ちた女性は腰砕けになり女性のかぼちゃ形の帽子は脱げ、隠れていた真っ黒で男の子と見間違えてしまうような短い髪の毛がさわさわと揺らめいた。その女性はこの家の娘、七三子だ。
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