男嫌いの姫様の冒険記
「お怪我などしていませんよね……。王女様」
サダックはしゃがんでいる王女に手を差し伸べます。
王女はその手を取り立ち上がりました。
なぜここにサダックがいるのか疑問はありましたが、
対峙して、ありがとう、と言うつもりで顔を見上げると。
サダックの銀色の長い髪先が、王女の目に入りそうな距離で揺れています。
その奥には筋の通った形のいい鼻と漆黒の瞳。
今まで男性とこんな近い距離で向き合うことがなかった王女は、胸が高鳴り動揺しました。
しかしその動揺は、こんなに近い距離で男性と対峙したのが初めてというだけではないようです。
「よかった……怪我はないようですね……では私は用事がありますので」
王女は「なぜここに?」と聞きました。
「国王にこの鳥の件で用事がありまして……」
「そう……」
「それでは……」
サダックはまた鳥にまたがり、鳥はベランダから裏庭の国王の寝室があるほうに羽ばたいていきました。