龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。


「この円城寺 美奈の恋人を奪うなんて、許されることではなくってよ!悪しき心を持った雌豚には、お仕置きが必要でなくて?吊るし上げるなり殴るなり煮るなり焼くなりしてしまってくださいまし!」

仁王立ちで二人を見下ろすその顔は、彼氏の浮気に悩む乙女の顔から、我儘女王様の顔に変わっていた。

……否定できない。断れない。

ナゴミはまだ見ぬ浮気相手に同情してしまった。

四葉の方を見ると、面倒くさそうな顔で頬杖を付いている。もうツッコミを入れる気力も無いようだ。

「……あー……分かりました。お引き受けいたしましょう」

「きゃ!ありがとうございますですわっ!」

先程とは打って変わって、ぶりっ子ポーズをとる美奈。

しかしこのお嬢様、アニメキャラのように表情がコロコロ変わる。

「ただし、お礼はそれ相応の物をお願いしますよ。こっちもタダ働きって訳にゃいきませんので」

「勿論ですわ!フレンチのレストランフルコースでも、宝石のアクセサリーでも、遊園地の年間パスポートでも、何でもご所望くださいまし!」

「さっすが、円城寺財閥のお嬢様。それでは……」

そっと、四葉は手招きをして美奈の顔を近づけ、こしょこしょと耳打ちをした。

「……あらまあ、そんなことでよろしいのですか?」

美奈はキョトンと目を丸くさせる。

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