龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。


肉の音で食欲を唆られるのを堪えながら、ナゴミは隣の席に座る四葉に尋ねた。

目的地も教えてもらえないまま、突然四葉によって花厳の運転する車に乗せられた為、今から何が起こるのか全く分からない。

お陰で、花厳の顔を見る事も出来なかった。

きっと、詠芽や四葉に似た凛々しい顔付きだっただろうけども。

「見りゃ分かるだろ、フレンチレストランだよ。ちょっととあるつてで借りたやつだけど」

「か、借りた?!」

恐らく、つてというのは家族関係だろう。大丈夫だと分かっていても、やる事がいちいちぶっ飛んでて危なっかしい。

「さて、そろそろかな〜……」

四葉が左手首に巻いた腕時計を確認する。

「誰か来るの?」


ガチャ


ナゴミが聞くと同時に、ドアがゆっくりと開いた。

「あ!」

思わずナゴミは声を上げた。何故なら―――

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