龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。

「あれ、今の……遥加ちゃんの声?何、今の音……」

「ナゴ、行くぞ!」

四葉は反射的に走り出した。

「え、え?行くの?」

ナゴミも慌てて四葉の背中を追いかける。

「あそこかな?」

どうやら音がしたのは、バスケットボールやバトミントンのラケットが保管されてる準備室らしい。

先生や生徒が人だかりを作っていた。

それをかき分けて前に行くと、リンと遥加の前に砕けた破片が落ちていた。

「あっぶなかったー、ギリギリだったよー」

「う、うん……リンがいなかったら、ワタシ死んでたかも」

驚いたまま動けない二人と視線を合わせて、ナゴミは事情聴取する。

「遥加ちゃん、リンちゃん、何があったの?」

「あー、バスケボール取ろうとしたら、蛍光灯がいきなり落ちてきたんだよー」

「それをリンが落ちる少し前に気づいて……避けた瞬間に落ちてきたの。びっくりした」

天井を見ると、蛍光灯のない嵌め込み口。

その真下には粉々になった蛍光灯の破片。

その真横に、腕を引っ張って避けさせたのか、遥加の腕を掴んだままのリン。

ただの不幸な事故のようだ。
< 60 / 99 >

この作品をシェア

pagetop