龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。
『鷹嘴 リンは、いわば病人だったんだ。だがお前は、容赦なく退学処分の判断を下した』
「あ……」
ナゴミの口から理解のため息が漏れた。
『代理ミュンヒハウゼン症候群は善悪の判断が弱る病じゃない。だが、それを踏まえた上での決断をすべきじゃなかったのか、と思ってな』
ナゴミが恐れていた事態が現実の物となった。
四葉は一度『悪』と決めたものはとことん敵視し、地の底まで堕とす。
けど、小学生に善悪の根本的な決定づけが出来るのか。
四葉は家庭環境のお陰でませてるとはいえ、今年で十二歳になる子供だ。
世界全体を知ったような口ぶりをしているが、結局のところ、まだまだ子供。
その内、判断を誤って間違った人を悪人に仕立てあげてしまうかもしれない。
ナゴミが前に思ったように、雑草と間違えて将来美しい花を咲かせる新芽を摘んでしまうかもしれない。
四葉は今回、危うくそれを行いそうになってしまったのだ。
恐る恐るナゴミは四葉の方を見ると、ギリギリと奥歯を噛んでいる。
「……悪者は要らない!!居なくなればいいんだ!!」
爆発するような大声で、四葉は通話口に向かって叫んだ。
「母ちゃんはそれのせいでミスったんだろ!!私はそんな風にはならないからな!!」