龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。
「それにしても、ナゴの家がこんな広いとは思わなかったな」
湯呑みを持った四葉の手がカタカタと震えてる。
「そう?普通じゃない?」
「離れと池と道場がついてるようなでかくて広い家が普通であってたまるかよ!!」
ナゴミの家は体育館二個分くらいの敷地を持つ日本家屋だった。
この家はナゴミの祖母のもののため、表札が祖母の苗字になっていたせいで四葉は把握出来てなかったらしい。
さっき来た迎えも、通いのお手伝いさんらしい。
緑茶の最後の一口を飲み干し、四葉は呆れた眼差しを向けてきた。
なんで呆れられてるのか分からないという顔で、ナゴミは慣れた手つきで和菓子を口にした。
千利恵も少し、広すぎて落ち着かない様子。
でもその顔は、お茶が効いたのかさっきより顔色が優れている。
左肩に乗せるように緩く結った髪も、心なしか艶が出たように見えた。
「えっと、改めて自分の口から言うね。三年花組生井 千利恵、龍華寺 四葉初等部生徒会長に依頼をしに参りました」
小学生相手にしては丁寧すぎる挨拶で、千利恵は切り出した。
「用件は?」
「うーん、唐突かもしれないんだけどね、私……少し前に妊娠したの」
ドクンっと心臓が跳ねた。