龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。
高校生で子供が出来る。これは結構な問題である。
まだ若干十二にも満たない齢のナゴミにも、これからの話が深刻なものであると分かった。
「男性とお付き合いした事は無いし、その……行為もした事がないの。未婚の母って感じかな」
糸のように細い目を更に細めて笑う千利恵を見ると、自分に子供が出来た時、本当に嬉しかった事がよくわかる。
「でも……母に言われて、中絶しちゃった」
寂しいような顔で、彼女は自分の腹部を撫でた。
その中の子宮には、何も無い。空っぽだ。
「どうしてですか?確か中絶って、本人の了解が無いと……」
花厳経由なのか、四葉は無駄にこういった知識にも長けている。
「だから、母に言われたの。『貴女は子供なんだから、妊娠なんて』ってね。あまりの剣幕に、つい首を縦に振っちゃった」
学生の内に妊娠出産が出来るのは、本当にわずかな可能性。
正座した膝の上に乗せた千利恵の拳が、少し震えた。
「そこからよ。母はかなり過保護になって、私のクラスの男子、同じ部活の異性、男の先生……私と関わる異性全て、文句を言いに行ったの。場合によっては嫌がらせもしてるらしいわ」
「え……何で?千利恵さんは何もされてないんですよね?それってどうなんですか?!」