龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。

「そうなんだけどね、ナゴミちゃん。母はちょっと心配性な所があって……皆母がヒス気味なのを理解してくれていて、『千利恵は気にしなくていいよ』『俺らなら大丈夫だよ』『しょうがないよね』って言ってくれる。けど……」

それにばかり頼ってもいられないし、いい気になって千利恵の母による嫌がらせがエスカレートする恐れもある。

千利恵が今一番怖いのは、おそらくそれだ。

「お願い……母を止めて!私は異性と必要以上に関わってないし、中絶もしたくなかった……っ。私、このままだと本当に……」

本当に、また一生子供を授かれなくなる、生涯を共にする相手を見つけられなくなる、最悪、ずっと過保護すぎる母から離れられない。

自分が誰かに操られながら生きているのがよっぽど苦しいらしく、千利恵はまたお腹を抱えてうずくまった。

「それに……あの子に申し訳なくて……っ」

あの子というのはかつて千利恵のお腹の中にいた子供だ。

「千利恵さん……」

もし自分だったら、自分が千利恵の立場だったらどうだろう。

ナゴミはまだ発達途中の下腹部を摩ってみた。

未熟な自分じゃまだよく分からないが、きっと得られた喜びと失った悲しみは同じくらい大きなものだ。

どうにかしてあげたいところだけど、若干小学生の二人に解決出来るのだろうか。

ちらりと四葉を見やると、不謹慎な程楽しそうに口元が緩んでいき……
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