龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。
足袋を履いた足で廊下の手すりをタンっと越え、茂みを切るようにに薙刀を振った。
「破(は)ァぁっ!」
葉が風に乗ってヒラヒラと踊る。
「ぐぁっ?!」
男の悲鳴のあとに小さく鮮血が散った。
茂みが一刀両断され、隠れていた男の姿が顕になる。
男が薙刀に怯えて腰を抜かしている隙に、壁にかかっていた防犯用の刺股を首に突き付けた。
御用だ。
「あら、警察の方?いつもお世話になってます。山茶花です。また捕まえたので取りに来て頂けるかしら」
後ろを見ると、着物の袂に入れていたスマホで山茶花が110番通報していた。
おほほと上品に笑ってはいるが、喋ってる事は結構物騒だ。
しかも通販でもするようなノリで110番してるし。
「はぁ……おばあちゃま。今月で五回目ですよ?これではキリがありません。もういっそデカいGホイホイか巨大ネズミ捕りでも置いといた方が良いんじゃ……」
「あら良いじゃない、お稽古より実践の方が強くなれますよ」
「私は!!あくまでおばあちゃまをお守りする為に薙刀を心得てるんですよ!!おばあちゃまがどこかで恨みを買わなければいい話なんですけどね……いったい、若い頃何をやらかしたのですか」
ナゴミは薙刀術に長けているが、それは今のように同居している祖母を守る為。