引っ越し先はあたしの隣⁉︎
だけど、やっぱり「なんでもない」って言われてしまって。
隼田くんは今なにを考えてるんだろう。
隼田くんの背中に問いかけてみる。
こういうとき活発で素直な女の子だったら、そして痩せてたら、言えるんだろうなぁ。
それに比べてあたしは……。
はぁ。
「どした?ため息ついて」
「ぅえっ、ためい……ブッ」
ったあ!
あたしは急に立ち止まった隼田くんにぶつかってしまった。
前からいい香りがする。なんか落ち着く。
手で鼻をこすりながらつぶってた目をゆっくり開くと白い生地が見えて、視線を上にもっていった。
そこにはあたしを見下ろしてる隼田くんが。
「っ!ご、ごめんねっ」
あたしはバッと離れた。
わーわー、ドアップの隼田くんがぁあ!!
やばい、心臓が痛い。ドキドキが急加速してしまって。
あ。
目線をさまよっていると隼田くんのある部分に目が止まった。
「ごめん、洋服に……」
と隼田くんのTシャツを指差した。
そこにはうっすらとピンク色が付いてしまっていた。
……やっちゃった。
「ほんとごめんねっ!弁償するよ!」
ほんと申し訳ない。
やっぱメイクなんてするんじゃなかった。
そもそもメイクなんて似合わない顔なのに。
でも、ちょっとでも可愛くなりたいって思ってしまったから。
「いいよ、気にすんな」
「でも……べ、」
「もうこれ以上言ったらダメ」
そう言いながら人差し指をあたしの唇に触れた。