引っ越し先はあたしの隣⁉︎
えっ……ぇええぇえ!?
ななな、ナニコレっ。
隼田くんの指がっ……く、唇に!!
目線はさまようばかり。
とても不自然になってしまって、隼田くんの顔と口元にある指を交互に見てしまう。
てか、いつになったら離れるのぉお!!
く、くるしっ。
「ハハハっ、ごめんごめん」
やっと離してくれたかと思ったら思いっきり笑ってて。
「ぶはぁーーーっ!」
あたしは息を止めてた分、思いっきり息を吐いて思いっきり空気を吸い込んだ。
ゼェーゼェー……。
声には出してないけど自分の中ではこんな感じに息してるつもり。
やっと、離れた。
いつの間にか息を止めてたらしい。
そりゃ止めるわっ!
びっくりしちゃうし、ドキッとなったし。
あの顔はずるい。
どうしたらあんなカッコ良過ぎる表情できるんですか?!
息を整えてると隼田くんが言った。
「息、止めてたの?」
「と、止めちゃってましたよっ」
すんごい苦しかったんだからねっ!
「ごめんごめん。でもさ、……やっぱなんでもない」
……また、『なんでもない』って。
なんでちゃんと言ってくれないのかな。言いたいことあるんだったら言ってくれればいいのに。
「ねぇ、隼田くん。言いたいことあるんだったら……言っていいんだよ?」
言って欲しいな。なんでもいいから。
「……わかった。ちゃんと言う。だからそんな顔しないで」
まゆをさげて頬に触れてくる。
頬がピクッと緊張してるのがわかった。
なんか、隼田くんヘンだよ。
「今日、楽しかった?」
隼田くんの手はまだあたしの頬に触れている。
「た、たのしかったよ……?」
「じゃあさ、なんでため息つくの?」
言われた言葉に目を開く。
そっか、あたしが全部いけないんだ。せっかく楽しませてくれようとしてくれたのに。あたしったら自分ばっか考えちゃって。
こうやって隼田くんを困らせて。
……ちがうよ。違うんだよっ。
あたしに勇気があったら、あともうひと勇気があったら……。
こんな自分がほんと嫌だ。
本当は素直に伝えたい。
けど、こんな体型じゃダメなんだよ。