引っ越し先はあたしの隣⁉︎
とはいったものの、男の子の足の速さには適わなくあっという間に捕まってしまった。
握られた手がどんどん熱くなっていく。
やばい、手汗が!
手を握られることにまだ慣れてないから余計で。
「なんで逃げるの?」
「だ、だってっ……!」
だって恥ずかしいんだもん。
あんな行動しちゃってあたしらしくない。
もう穴があったら入りたいレベルの恥ずかしさなんだよ?!
さらに隼田くんは『可愛い』なんて言うし。
「黙ってるとこうするよ」
そう言って隼田くんはあたしを引き寄せ、ゆっくりと顔を近づけてきた。
えっ、えっ、えーー!!?
これってまさか。
キスしちゃうパターン?!
ちょっとっ
「ちょ、隼田くんっ!」
そう言うと、鼻先が触れるか触れないかの距離で止まった。
あたし達は無言で見つめ合う。
すると隼田くんはクククと笑いながら離れて、
「木下最高だわ」
そう言って歩き出した。
え。
ちょっと。いや、かなり放心状態のあたしは彼の背中を眺めてるばかりで、ボーッとそこに突っ立っているしかなくて。
やっと我に返ったあたしはさっきと同じように隼田くんの元へ駆けつけた。
もちろん、今度は抱きついてません!
家の前に着き、お互い言葉を交わしてそれぞれ家に入る。
けど、後ろからあたしを呼ぶ声がして振り向いた。
そしてあたしの手を引いて自分に引き寄せキスを落とす。
ゆっくりと離れる隼田くんをあたしはただ見つめることしか出来なくて
「さっき出来なかったから」と微笑みながら言い、「また明日な」と言って家の中に入って行ってしまった。
……隼田くん、これはズルイよ。
そう思いながら家に入って、すぐベッドにダイブした。