引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「どした?」
急に立ち止まったあたしに、少し前にいる隼田くんが振り返って聞いてくる。
けど、今のあたしには何も聞こえない。
一つ聞こえるといえば、自分の鼓動ぐらいで。
え。なんで。
なんでこんなところにいるの?!
や、やだっ。会いたくない。てか無理。
そう思ったらUターンして走り出していた。
隼田くんがあたしを呼んでる。
でも今はそっちに顔すら向けない。
……隼田くんっ、ごめんなさいっ!
心の中で叫んで近所の公園へ向かった。
公園に着いてどのくらい経ったんだろう。
あたしはひとりベンチに座ってボーッとそんな事考えていた。
実際は走ってから現在までそんな経ってないと思うんだけど
今の自分には時間感覚がない。
どうして、アイツがいるの?!
引っ越したんじゃ、なかったの?!
やだ。嫌なこと思い出しちゃうじゃん。
思い出したくなくて必死に閉じ込めるけど、さっき見たアイツの笑った顔が邪魔して
どんどんフラッシュバックしてくる。
「なんで思い出しちゃうのっ」
自然と涙が出る。
「っ!きのしたっ!」
あたしの名前を呼んだ声に耳が反応をする。
……来てくれたんだ……。
息が荒い。
走って来たの?
「ここにいた……っ」
言葉だけで隼田くんがどんな表情しているのか分からない。
まだ下を向いたままだから。
泣き顔なんて見られたくないもん。
って見られたことあるんだけど。
何度も見せられないよ。
……嫌われたくないし。
隣に温かさを感じるから隼田くんが座ってるんだと読み取る。まだちょっと息が荒い。
「ごめんね」
隼田くんを置いて走って。
振り向けなくて。
黙ったままで。
「ありがとう」
ここに来てくれて。
探してくれて。
傍にいてくれて。
いろんな思いが溢れ出てくるから涙が止まらなくなってしまった。