引っ越し先はあたしの隣⁉︎
やっと足を止めたなっちゃん。
誰もいない教室にあたしの息遣いだけが繰り返されている。
静かだから余計大きく聞こえて、心臓もバクバク言ってる。
っ、なっちゃんはなんで息上がってないの?!
そう問いかけたいけどそんな雰囲気じゃないし。
まずは、この空気を何とかしなきゃっ。
そう意気込んだと同時に、なっちゃんが振り返った。
その顔は困惑に似たような表情で。
そして今にも泣きそうで。
「……なっちゃん?」
あたしの顔を見たまま黙っている彼女に声をかける。
ハッとしたように瞬きをしたなっちゃんは、少し息を吐いて言った。
「——っ!?」
告げられた言葉に思考が停止した。
それはあまりにも突然で、衝撃的で、頭痛がした。
うそでしょ?!なんで。
なんでアイツが学校に?!
どうしよう……っ。
「まい……」
「なっちゃんっ、どうしよ……」
ふと昨日のことを思い出した。
……やっぱりあれは見間違いじゃなかった。
髪型は変わってたけど、あの笑顔はアイツだったんだ。
あたしの頭の中は真っ白でもう一つの言葉しか出てこない状況になっている。
すると、背中にぬくもりを感じた。
「まい、大丈夫だよ。近寄らないようにすればいいし、私もいるし、隼田だっているし」
背中をポンポンとさせながら言うなっちゃん。
そして、何度も「大丈夫だよ」と言ってくれている。
あたしはただ頷くことしかできなかった。
こんななさけないあたしに嫌な顔一つも見せずに傍にいてくれるなっちゃんの優しさに涙した。