引っ越し先はあたしの隣⁉︎
──ガシッ。
「お前、いい加減にしろよ?!木下が嫌がってんの、分かんねぇのかよ!!」
荒らげた声にハッとして顔を上げた。
そこにはアイツの胸ぐらを掴んでる隼田くんの姿が。
アイツは全然微動だにしていない。
むしろ楽しんでるように見える。
「なに、熱くなってるの?カレシさん」
わざとらしい言い方で笑ってるけど、色のない目で隼田くんを見てる。
今にも殴りそうな雰囲気をかもし出してるからあたしは止めに入った。
「なんで止めるんだよ。木下……」
なんでって……。
喧嘩なんて見たくないし。隼田くんが傷ついてるとこも見たくないし……。
あたしだってムカつくよ?
……人間だもん。
でも……。
「も、もういいの!……こんなヤツ、相手にしないで、いいから……っ」
ほんと、こんなヤツ相手にしないでいい。
相手にするだけ、時間の無駄。
「……なんだよ、それ。せっかくっ──」
「じゃ、帰るから」
アイツの言葉を遮って、隼田くんはあたしの手を取り、アパートへ向かった。
ごめんね、隼田くん。
なっちゃん達も。
さっきまで幸せだった時間を自分が壊してしまったような気がして、喉元に熱が込み上げてくると、目がぼやけてきた。