引っ越し先はあたしの隣⁉︎
教科書、ノートを机の中にしまいながらチラッと隼田くんをみる。
授業終わったの気付いてないのか分からないけど、助けてくれたんだから言うことは言わなくちゃね。
隼田くんの肩をツンツンして
「あ、ありがとう」
そう言うと、彼は伏せたまま顔をあたしの方に向けて「ん」とだけ言って、また伏せた。
が、またこっちに顔を向けて一言。
「お前、ばかだなー」
……。はぃい!?
ムッとしたあたしは強めに言った。
「しょ、しょうがないでしょっ!分からないものは分からないのっ」
バカってことぐらい自分が一番わかってるっつーの!
なんなの、笑ってるし。自分は出来るからって『お前ばかだなー』だって!
酷くない!?
「でも、それだけじゃないだろ?」
はい?なにそれだけじゃないって。
「ど、どういう事よ」
すると彼はニヤりと笑いながら思いがけないことを言った。
「だってお前、俺の顔めっちゃ見てたじゃん。そのせいで授業聞いてなかったんだろ」
……うそ、こっそり見てたのバレてた!?
っじゃなくて!!
「なワけ、ないし!」
見てたのを隠そうと言い訳したが、あたしの声は上ずってしまった。
……もうバレバレじゃん。
「ウソつくの下手すぎ」
と笑いながら言った隼田くん。
その笑顔に思わずドキッとしてしまう。
ほんとこの笑顔弱いなー。
あたしは恥ずかしくなって顔を背けた。
なんで、隼田くんの笑った顔見るとこんなにドキドキするんだろ。
ふと頭に浮かんだ文字。
まさか、あり得ないよ。
もう決めたんだ。『しない』って。
『しない』じゃない、『しちゃいけない』んだ。
あたしは浮かんだ文字を心の奥にしまい込むように他の事を考えることにした。
もうこの文字が出ないように。感情が現れなくなるように。