引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「……誰。俺あんたと知り合いだったっけ」
「え……?な、なに、言ってんの」
「てか、そこどいてくんない?通れないんだけど」
頭が真っ白になった。
え。どういうこと?
『誰』とか『知り合いだったっけ』ってなに?あたしのこと忘れたの?
同じクラス、なのに?
あたし達の周りがだんだん騒がしくなる。
興味津々の視線が痛いくらいに突き刺さって。
「──っ」
これから授業が始まるのにこの視線から逃れたくて逃げ出した。
後ろからあたしを呼ぶなっちゃんの声が聞こえた。
でも、それを無視して走った。
ムカついてムカついて、悔しくて苦しくて。
涙が溢れた。
辿り着いたのは体育館近くの水道所。
蛇口側の裏に回り込み、しゃがんだ。
ここなら誰も来ないだろうと思ったから。
そんな保証はないだろうけど。
でも、いまは体育の授業やってないから当分は来ないと思った。
「…………」
もうスッカリ枯れてしまったみたいで、涙は出てこなかった。
思いっきり泣こうと思ったのに。
今戻っても気まずいだけだし、会いたくない。
ボーッと目の前の壁を見る。
ふと浮かぶ岩島の顔。
色の無い目で、本当にあたしを覚えてないかのような表情だった。
本当に忘れたの?
それとも……わざと?
……なんで?
色々考えていくうちに、意識が遠くなっていった。