引っ越し先はあたしの隣⁉︎
いつの間にか眠ってしまい、目を覚めた頃には辺りはオレンジ色に染まっていた。
体育館や校庭からは賑やかな声が聞こえてくる。
あたしは教室に置いてある私物を取りに向かった。
教室の前までやって来てドアに手を掛けたところで手を引っ込めた。そして、息を潜めて壁に張り付いた。
中から声が聞こえたから。中には3人いるみたいだった。
1人は……岩島。
声だけで分かるなんて、あたしの耳まで岩島に敏感になってしまってるんだ。
恋って怖いと思う。
岩島の声だけが大きく聞こえてしまうんだから。
「イワシー、今日フったんだってー?」
陽気な声で聞く男子。
名前は知らない。声は聞いたことあるかもしれないけど。
「はあ?!何言ってんの、お前」
笑いながら否定する岩島。
「またまた〜。照れんなよ!」
「照れてねーし」
「オレ聞いたぞ。昼に廊下のど真ん中で向き合ってなんか話してたって」
また違う声が岩島に言った。
「それ、誰が言ってたんだよ」
「あーっと、……神楽(カグラ)」
「……神楽かよ、……よけいなことを」
岩島のだるそうな声が響いた。
あたしには岩島の小さな声を拾えたけど、2人は聞こえなかったらしい。
神楽……。誰だろ?
そう思ったのは一瞬で話に耳を傾けた。