引っ越し先はあたしの隣⁉︎
話はどんどん進んでいき、ついに核心に入った。
「そーいえばさ、最近……って誰だっけ?」
と陽気な声が悩ませながら問う。
そして思い出したかのように言ったんだ。
「ほら!あの子!イワシーが1年ときに仲良くしてた体の大きい子!」
ドキッとした。
だって、二つのワードであたしの事だと分かったから。
言葉を選んだのかわからないけど、心に鋭いトゲが刺さったように感じた。
──チクン。じゃなくて、──ドスン。
「あー、確か……木下さん、だっけ?」
「そそ!」
名前を言われて更に加速した。
息苦しい。どんどん周りの空気が薄くなってきてるみたい。
それでも、耳を傾けた。
「そんなやついたっけ?」
「「は!?」」
ふたりも不意打ちだったのか、驚きを隠せない声をあげた。
あたしも岩島の言葉に耳を疑った。
な、に言って、るの?本当に忘れたの?
いつも笑顔で、話しかけてくれたのに?
あんなに話したのに?
手を振ってくれたのに?
「おまっ、……え?!それマジで言ってんの!?あんなに……」
「うるせぇな」
続きを言わせないかのように遮る。
それでも陽気な声の持ち主は続けた。
「だって、お前、木下さんのこと『好き』だって言ってたじゃん!」
衝撃的な一言だった。
う、そ……?!
岩島が、あたしのことを……好き?
有り得ない。ありえないよ、それは。
「は?!いつそんな事言った?あんな……デブ好きになんねーっつーの。大体俺があんなデブを好むと思ってんの!?」
ありえねぇ、と2人に鼻で笑っている。
「俺は細いのがタイプだから」
言葉を失った。
あまりにも衝撃的な発言続きで。
じゃあ、あの笑顔はナニ?
優しく向けてくる瞳。それは親しみがあったからじゃなかったの?
じゃあ、あの言葉も?
中2のときたまたま廊下であった時に岩島、こう言ったよね。
『木下と会えて嬉しいな』
『やっぱ木下の笑顔は元気になるな!好きだよ、それ』
そう言って笑ってくれたのは、全部嘘だったの?