引っ越し先はあたしの隣⁉︎
エール
肌寒かった季節はあっという間に過ぎ、生暖かい空気と湿気が多い季節、6月に入った。
今日は体育祭。
澄んだ綺麗な水色の空に、太陽がサンサンとあたし達を照りつけている。
もう夏なんじゃないかってくらい暑い。
って、もう夏か。
「まい〜!飲みものちょーだい」
なっちゃんがゾンビ風に手を前に突き出してあたしに向かってくる。
「いーよー。あっちぃね」
はいっとペットボトルを渡した。
「ぷはー!」
「すごい飲みっぷりですな。菜摘さん」
なっちゃん、それあたしのなんだけどー?
まだ一度も飲んでないその中身は半分くらいなっちゃんのお腹んなかに入ってしまった。
《続いての種目にでる生徒は入場門に集まってください》
「まい、つぎあたし達の出番だよ」
「だね!よっしゃ、頑張ろう!」
あたし達は顔を見合わせて入場門へ向かった。
あたしとなっちゃんは同じチームになることができたんだ。
この学校の体育祭は各クラスの実行委員がくじを引き、同じ色を取ったクラス同士がチームになるっていうシステムになっている。
いよいよ、あたしの出番がきたー!
次の種目は障害物競争。
障害物競争は苦手なんだけど、最後には“アレ”が待ってるから。
なっちゃんもあたしと同じ目的らしい。
───パン、パンっ!
障害物競争の始まる合図がなった。
一列目、二列目、三列目が終わり、あたしの列の番がきた。
後ろから「まいー!がんばー!」となっちゃんの声がして、前を向いたまま頷く。
集中だ。
“アレ”が待ってるんだから。
「位置についてー、よーい……」
───パンッ!
合図とともに走り出した。“アレ”に向かって。