引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「俺は……怖かったんだ」
「え?」
「……俺、中学卒業した後すぐ引っ越しだったんだ。そしたら木下と会えなくなるし、話せない。……ほんとはずっと一緒にいたかった!」
視線が重なった。
今の目はあの頃の色の無い目ではなかった。
すごく真っ直ぐで、輝いていたあの時と同じ優しい目。
「いわし……っ!」
グイッと手首を引かれて、かたいものが頬に当たった。
抱きしめられてる……。
「木下、ごめん。……俺、中学ん時からずっと好きなんだ」
耳元で囁くように言った。
な、によ。い、意味がわからない。
ずっと好き?
有り得ない。それも嘘なんでしょ。
「ウソじゃない。今も好きなんだ」
びっくりした。
口に出してないのに、言われたから。
でも、そんな言葉あたしには通用しないよ。
そんなこと言われても、困る。
あたしには隼田くんがいるんだから。
「……ごめん、岩島。あたしには……──ッん!?」
『隼田くんがいるから、応えられない』
そう言おうとしたら、口を塞がれた。
それと同時に体がだんだん冷たくなってくる。
だって、見開いた視線の向こうにぼう然とあたし達を見ている隼田くんがいたから。