引っ越し先はあたしの隣⁉︎
話している内にいつの間にかあのつまらない漫才が終わっていたらしく、会場は賑やかさを取り戻していた。
それにしても、木下遅くね?
どうしたんだろう。
腕時計を確認すると、木下がここを出てから10分以上は経ってると思った。
……なんかあった?
なんか、嫌な予感がする。そんな気がした。
飯島も心配しだしてきたから、
俺は立ち上がって、「探してくる」と断って体育館を出ることにした。
「うっわ……さみぃ」
外へ出ると冷たい風が体当りしてきた。
思わず身を縮める。
こんな寒いのに、どこいるんだよ。
前に、自分は一年中暖かいとか言ってたけど。
さすがにこの寒さは木下でも寒くなるだろ。
そんなことを思いながら足はどんどん進んでいき、購買に差し掛かった。
……なんか、声がする?
自販機から聞こえるけど、普通に話してるような感じじゃない。
少しずつ歩み寄る。
声は徐々に大きくなってはっきりと耳に届く位置まで来ていた。
あと一歩のところで俺は足を止めた。
木下の声がしたから。
木下は戸惑ったような、焦りをにじませた声をしていた。
ここからじゃ何も見えない。自販機の影に隠れてるから。
俺からは声だけ。
木下といるのは男だ。たぶん、アイツ。
すると、男から衝撃的な一言を言った。
「──……ほんとはずっと一緒にいたかった!」
は?何言ってんだ?!
ふとさっき飯島が言った言葉を思い出した。
『岩島は……舞のことが好きだった』
っ!
過去形……。でも今の言い方って。
本当にアイツは……まだ木下のこと好きなのか?
そう思った時だった。
木下が声にならない小さな声をあげたのは。
とっさに体が動いた。木下を守らないと。
なのに、見たくない光景を目にしてしまった──。
その瞬間、何かが爆発するような音が自分の中に響いた。