引っ越し先はあたしの隣⁉︎
苦くて甘い時間
「お前っ!何してんだよ!!──っ」
隼田くんはあたしから岩島を離し、殴った。
「……お前、人の彼女に何した」
あの時よりも更に低い声。
怒ってるんだと瞬時に理解した。
「ハハッ、凄い顔」
ゆっくり起き上がって隼田くんを睨んだ。
さっきとは真反対の目つきだ。
「何したって聞いてんだよっ!!」
「知りたいの?」
余裕な笑みを浮かべて、鼻で笑う岩島。
「それなら木下に聞いてみれば?どーせ、聞いてたんだろーけど」
岩島があたしの目を見て言った。
な、なんで、ここであたしに振るのよ。
…………。
……聞いて、た?
隼田くん、聞いてたの?!
い、いつから!?
あたしの一歩前にいる隼田くんをみた。
顔の表情はわからない。
でも、手が強く握られてた。
「聞けねーの?!彼氏なのに?笑えるわー」
そう言ってまた鼻で笑う岩島にあたしもついに切れた。
「笑わないで!彼氏だって聞きたくても聞けない時だって、あるんだから!人のこと散々馬鹿にしてるアンタに、言われたくない!!!」
コイツなんなの?!
人の彼氏を、バカにするなんてっ!!
やっぱ、何一つ変わってないんだ!
「あたしには、隼田くんしかいない!アンタなんかっ!す、す……」
なんでだろ。『す』の次の言葉が、言えない。
心のどこかで岩島のことを、想ってるの?
そんなわけない。
でも、言えない。
その代わりに、ツーっと涙がこぼれた。