引っ越し先はあたしの隣⁉︎







ギュッ温かいものがあたしを包んだ。
息を吸うと、あたしの好きな香りがした。


「いいよ、もう。……じゃ、そういう事だから」

そう言って隼田くんはあたしの手を掴んで歩いた。


下を向いてたから、岩島の顔は分からなかった。
なんで。なんで……。
最後まで言えなかったの?
あたしが岩島を想ってるって言うの?
あたしが好きなのは、隼田くんだけだよ。


そんな自分が情けなくて、涙がどんどん溢れてきた。


「はやた、くっ……ごめ、っね」

「ん、大丈夫だから」


手を引きながら優しく言ってくれる。

やだなー。また泣いちゃったし。
優しく言ってくれるけど、やっぱ困ってるよね。
……ごめんね。



──ガラッ。



鈍い金属音が耳に響いて、閉めたと思われる音に肩を上下させた。



涙はおさまって、顔を上げた。
前には隼田くんの背中が見える。
辺りを見渡すと、黒板、教卓、机、椅子があった。

……開いてたんだ、教室。
教室は暗いけど、外の明かりが照らしてる。


隼田くん、怒ってるよね?

背中をみて思う。
だって肩を上下させて、手は強く握られてるから。
そうさせたのは紛れもなくあたしだ。
あたしが、アイツにっ。


されたことに心が酷く傷ついた。
けど!
隼田くんにあの光景を見られたことに、酷くえぐられた。
その時の隼田くんの表情。
目を閉じなくても蘇ってくる。


目を見開き、失望した表情。

本当に傷ついてるのは、隼田くんだ。


そう思ったら、止まってた涙がせきを切らしたように溢れてきた。








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