引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「もう、泣くなよ」
そう言ってあたしを優しく包んだ。
いつ振り返ったんだろう。
もう泣き顔飽きたよね。呆れるよね。
でも、『泣くなよ』って言われても。
ムリだよ。だって。
「あたしっ……隼田くん傷つけた、もんっ」
もう止まらないよ。
隼田くんが優しいから。
優しく包むから。
隼田くんは黙ってポンポンと背中を撫でながら言った。
「うん。……正直、かなり参った。アレ見ちゃったし……」
だよね。
参るよね。傷ついたよね。
……怒って当然だ。
「でも、木下があーゆー風に言ってくれたら。全然大丈夫」
そう言って少し体を離して、柔らかく笑った。
「……お、怒ってないの?」
なんで、笑ってられるの?
あたしだったら、何が何でも怒ってると思う。怒りはMAXになってると思う。
「まー、怒ってるっちゃ怒ってる、かな。でも木下には怒ってない。……だから笑えよ」
そう言ってムニっとほっぺたを摘んだ。
あたしの大好きな笑顔で。
そうだよね。
笑わなきゃ、ね。
『泣いた分たくさん笑顔みせてな』だもんね。
まだ摘まれてるけど、口角を上げて笑ってみせた。
ちゃんと笑えてる、かな?
黙ってあたしの顔をジッとみる隼田くんに?を浮かべながらみた。
「……ダメだな。その笑顔は木下らしくない」
らしくない?
あたしらしい笑顔って?
わからない。
「わかった。じゃあ、こうする」