引っ越し先はあたしの隣⁉︎
嫌われてもいい
~拓side~
去っていく二つの足音を耳にしながら、強く握りこぶしを作った。
俺、岩島拓はかなりのダメージを食らっている状態だ。
ちくしょう。
なんでいつもタイミングが悪いんだ?
あの時もあの時も、あの時だって……。
なんでいつも俺は。
「俺は、ただ……」
「やっほ〜!イワシ〜」
木下たちが去って行った方向から俺を呼ぶ声がした。
聞いたことのある妙に鼻にかかった声。
ロッカールームの影からひょこっと顔を出す人物に目をやった。
「や〜、いいのが見れたよー♪なんかごちそうさまです!」
いかにもハイテンションな女、神楽をみて俺は息をついた。
相変わらずだなと思う反面、ウザさが更にパワーアップしてる気がした。
神楽とは中学が一緒だった。
インパクトのあるルックスで一際有名な神楽。
見た目は清楚な感じなのに、喋ってみると意外と明るくて冗談も言える、どこにでもいるような元気な女子だった。
でも、思った以上に口が悪いヤツでもあった。
多分、上に兄が二人いるせいかと思う。
神楽には特に親しい友人がいなかったせいか、俺ら男子とつるむようになって。
たまに出てくる木下の話題。
俺は不機嫌オーラを出しまくってた。
それに気付いた神楽は詮索しに度々来るから、つい口からこぼれてしまったんだ。
『木下が好きだ』って。
その出来事は中1の冬ぐらいだったと思う。