引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「お~い!大丈夫かい?イワシー」
目の前で手を仰ぐ神楽。
いつの間にか目の前に……。
俺がボーッとしてるから。
「あ、分かった。さっきのでダメージ受けたんでしょ〜」
ニヤニヤした似合わない顔を浮かべて、慰めるかのように俺の肩に手を置いた。
「別にダメージなんか受けてねーし」
「またまた〜、強がっちゃって。イワシーって可愛いとこあるよね〜!」
うわ、どんどんキモくなったな。
本人には失礼だけど。
てか……ボディタッチが多いし。
あとさ、俺の気持ち察して欲しいんだけど。
ダメージは受けたよ。かなり。
分かってるんだったらさ、そっとしといて欲しい。
分かんないかな?
そう思いながら、未だに突っついてくる神楽の手を避けて体育館の方へ足を向けた。
「ねえ、さっきからさうちへの態度おかしくない?」
「は?」
「ほら、なんか冷たいよ?てかさぁ、なんか忘れてない?」
そう言って神楽はスマホをかざして見せた。
俺、なんかこいつと約束してたっけ?
やく、そく……。
瞬時に頭をフル回転させて、目を大きくさせた。
やっべぇ、完全に忘れてた。
こいつと……約束してた。
それはとても酷な約束だ。
「あ、やっと思い出したって顔してる。忘れてたの?こんな大事な約束」
そう言って俺に近づいて、スマホ画面を見せた。
目を全開に開いた。眼球が飛び出るほどに。
あまりにもハッキリと鮮明に写されている画像。
そこには俺と木下がキスしてる姿が。
「ね!これ上手く撮れてるでしょ!?ほんといい写真だよね〜」
次々と表示される俺と木下の画像。
どれもいい写真とは思えなかった。
何が『上手く撮れてる』だ。
側でペラペラ喋ってる神楽に耳を傾けず、ただ表示されているその画像を眺める。
どの写真も木下は苦しそう。
驚く顔も恐怖・困惑をにじませている。
その姿に俺はどんだけ最悪な態度をとってきたのか思い知らされた。