引っ越し先はあたしの隣⁉︎







「イワシーどうしたの?なんか浮かない顔してる。嬉しくないの?」


嬉しい?
これ見て嬉しい感情なんて湧きやしない。
むしろ、後悔。罪悪感が湧くばかりだ。


それなのにこいつはヘラヘラと笑ってやがる。
そもそもこれ撮って何の意味があるのか。


一瞬脳裏によぎったある事に、ドクンと脈を打った。



──まさか!




「どうしたの?」

「神楽、お前これでどうするつもり」


それをやったら、もっと木下を悲しませることになる。
『やめろ』
そう言う前に神楽が口を開いた。


「え、何今更。イワシーもこれが狙いだったからうちと約束したんじゃなかったの?」

蔑んだ目を俺に向け、鼻で笑った。


……いま俺は誰と話してるんだ?
神楽ってこんな奴だったっけ?

信じられない豹変ぶりに俺は瞬きした。



「うち、隼田くんのことが好きなの。なのに隣には木下さん。全然っ釣り合ってないじゃん。うちとだったらお似合いでしょ?!そう思わない?」


狂ってる。
どうしてそこまでする必要があるんだ?



「イワシーは木下さんのことまだ好きなんでしょ?!それだったら文句ないじゃん」

「おまっ!どうして知って……!?」

「目を見ればわかるし」


自分の目を指し、神楽は右口角を上げた。


俺ってそんなに分かりやすいのか?
いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。


まずは早くそれを削除してもらわないと。




「消さないよ、だって明日必要だもん♪」



は?こいつマジで最悪な女だ。
『消さない』『明日必要』!?
マジで何言ってんだ。


明日は片付けのため、生徒は学校へ行くことになっている。
ダルいけど、仕方ない。



「神楽さ、相手の気持ちとか考えないワケ?」

もう聞いているのも限界で思わず本音をぶつけた。

……俺は、木下に嫌われてもいい。けど、木下が好きだから。苦しんでる姿はもう見たくない。

散々傷付けといてよくそんなシャレたこと言えるなと我ながらバカバカしく思う。



でも、まだ好きだから。
せめて木下から笑顔を奪わないで欲しい。








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