引っ越し先はあたしの隣⁉︎







「卒業して引っ越して、たくさん後悔した。忘れられなかった……っ」


ツーっと岩島の目尻から透明できれいな雫がこぼれ落ちた。
それを慌てて拭う。


岩島が泣いてる。
その姿をみてまたギュッとなった。



「あたし苦しかった。……岩島に言われたこと」


表情も視線も、言葉も全部。

でも、もういい。
過去は過去、だから。
岩島も苦しんでいたんだ。



──もう一度あの頃のように戻れる?




「岩島、もういいよ。わかったから」

岩島の垂れている頭をみて言った。


ゆっくりと顔を上げる彼は驚きを隠せない表情をしてあたしをみる。



「き、のした……」


気の抜けた声であたしを呼ぶ。

なぜかまた締め付けられた。
今度はキュッと。



「あたしもごめん。岩島の気持ち知らないで、無視したりして……」


そう言うと涙目の岩島はブンブンと首を振った。

その様子がなんかおかしくて。



その途端、ギュッと優しく、かつ強く抱き締められた。



「い、岩島!?」

驚いて名前を呼ぶけど、反応はなくて。
そのかわり、肩が震えてた。
……もしかして、泣いてる?



「っ、笑ってくれた!もう見れないと思った〜」


そう言って大号泣し始め、あたしはどうすることも出来ないまま、ただジッとしていることしかできないでいた。


頭の隅でこの状況に危険を感じているんだけど。

もし隼田くんがこの状況を見たらって思うと……恐怖でいっぱいになりそう。

またあんな事されちゃうかも、だし……。



「っご、ごめん!泣いて抱き着いたりして」


バッと勢いよく離れてる岩島。
その顔はなんだかスッキリしていて、キラキラしている。
目元は真っ赤だけど。

あたしも気持ちが軽くなった気がする。
そして、思いっきり笑える気がした。








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