引っ越し先はあたしの隣⁉︎
『和解』とでも言う名のその雰囲気にふたりして浸っていると思い立ったように同時に声を上げた。
今日は片付け日だからチャイムが鳴らないんだった!
みんなどうしてるかな。
……まだ、戻りたくない。
今いるところは体育館に繋がる1階の廊下。そこには個人のロッカー全学年分や自販機、購買がある。
幸い、ここには誰も通らなかったからこうやって泣いたり怒鳴ったり出来てるんだけども。
多分、周りが見えていない状況にいたから来ても無反応だったかな。
クラスへ戻るの?
行きたくないのが本心。でも……。
「怖くて行けない?」
「えっ?」
「そんな顔してるから」
あたしの顔を指で指す。
先読みとかなんか、隼田くんみたい。
いや、そんなことないか。中学から岩島もかなり当てる一人だったから。
やっぱりあの時から変わってないんだ。岩島は岩島のままだ。
「ん?なんか顔に付いてる?!」
不思議そうに顔を傾げてキョロキョロし始めた。
あたしは首を横に振って笑った。
そして変わらない笑顔を向けてくる。
「あのさ、またこうやって話したりできる?もう一度『友達』になりたいなって」
『友達』
それを聞いて涙腺が緩みはじめる。
まだ、出てくるのか。涙さん。
頑張って堪えてみせた。
なんとかこぼれ落ちずに済み、あたしは縦に何度も何度も頷いた。
すると、岩島に手を差し伸べられ力強く手を構える。
あたしは右手でそれを握る。
ぎゅっと強く握られ、上下に軽く揺すった。
それは『友達』という新たな出発点の合図だと思った。