引っ越し先はあたしの隣⁉︎
握手されたまま、一方的に話し始める岩島に対して
あたしは頷いてばかり。
なんか答えるタイミングってのがつかめなくて。
そのまま「うんうん」って。
けど、それでいいとも思った。
岩島は中学を卒業して福岡に引っ越したらしい。
「明太子美味かった!」とか「あの明太木下にも食べさせたかったな」とか言って所々キュッてなった。
まさかこんな日が来るとは夢にも思っていなかったから。
また『友達』という位置に戻ることができたことなんて。
正直、嬉しい。
「木下、最後にさ……お願いしてもいい?」
真剣な目で見てくるから、ドキッとした。
お願いだから、という安易な考えにあたしは承諾すると、
「木下からちゃんと俺をフってほしい。これで俺の初恋は終わりにするから」
友達としては好きでいるけどっ、そう言って儚い笑みを浮かべた。
そうだよね。もう一歩前に進むために。
岩島のためだけど、これはあたしのためでもあるから。
あたしは頷き、小さく息をついた。
「あたしは隼田くんという大好きな彼氏がいるので、岩島には応えられません。ごめんなさい。……ずっと想ってくれて、ありがと」
そう言ってなぜか泣きそうになった。
でも、ありがとう。
好きでいてくれて、ありがとう。
忘れないでいてくれて。
──あたしも岩島が大好きだったよ。