引っ越し先はあたしの隣⁉︎



「っ……隼田くん!」


3階をやっと通過し、踊り場で立ち止まり一呼吸置いてから大きな声で呼んだ。

ピタッと止まる足を確認して、ゆっくり息を整えながら隼田くんに近づく。



「隼田、くん?」

顔を覗いてみるとぐっと唇を噛み締めていた。


あたしは隼田くんを包んだ。
ぎゅっと強く優しく。
すると、隼田くんも同じように包み返した。


「あのね、心配かけてばかりでごめんね。でも、もう大丈夫だから」

「……そっか。よかった」


返ってきた反応はちょっと予想外だった。
あまりにも冷静で優しい声をしてたから。


……隼田くんは分かっていたのかな?こういう時が来るってことを。


自ら離れて隼田くんの顔を見上げる。



「隼田くん、ありがとう」

そう言って笑顔を見せた。



泣いた分、これからはもっと笑顔を見せるからね。
もう当分は泣かないと思う。そんな気がする。



「ははっ、笑顔最高」

同じように笑ってそう言った隼田くんはもう一度抱きしめた。
少し目がキラッとしていた。




「っ……ぅうー」

「なんで泣いてんだよ」

「だ、だってー……っ」

涙が急に溢れてきたんだもん。
隼田くんが優しすぎるんだよ。
もう、大好きすぎるよっ。


隼田くんは涙が止まるまでそのまま抱き締めてくれた。



ここまで長かったような短かったような。

『恋をしない』と決めてから、たくさん自分を傷付けて、新たな種を見つけてからも見ないフリをしようとしてた。


それに眩しいくらいの光を照らした強い想いに、気付かしてくれた隼田くん。

辛い時も悲しい時もいつもあたしの傍で笑ってくれたあたしの大切な親友、なっちゃん。



いくつもの壁を貫いていくくらい種は大きく膨らみ、今こうして一緒に笑っていられるんだ。



みんな、ありがとう。
あたしは今最高に幸せです!









< 209 / 237 >

この作品をシェア

pagetop