引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「木下、見てみ!スゲェ」
「…………」
「うわ、高っけぇ」
「…………」
隼田くんが今まで見たことないくらいはしゃいでるんですけど?
すごく可愛いんですけど?!
心臓持ちませんよ!!
「木下、なんで固まってるの?」
なんでって……。
見ればわかるでしょっ。
あなたにキュンキュンしてるんですー!
「……怖いの?」
──!!
「べ、べべべ、べつニっ!」
そう言って手をブンブン振った。
こ、こんなの別に何ともな──※△□○~~!
む、無理!ムリムリムリーー!
実はあたし高所恐怖症なんです……。
「も……おりたい……」
まだ乗って5分も経ってない地点で弱音を吐いた。
景色なんて全然見れないじゃんよー。
こわい!怖すぎる!
「ごめんね、はや──!?」
申し訳なさ過ぎて謝ろうとしたその時。
グラッと後ろの方に傾いた。
若干だけど。
って!ななな、なにやってるの!?
少し顔を上げると、そこにはにこやかな隼田くんが立っていた。
「ななな、なに、やってるの……?」
「ん?ちょっと、ね」
はい!?
『ちょっとね』ってなに!
隼田くんは少し歩み、隣に座ってきた。
それと同時にゴンドラがわずかに揺れ傾く。
声にならない悲鳴をあげるあたしとは反対に、いかにもこの状況を楽しんでいる隼田くん。
てか、凄く密着してる気がする。
だって、隼田くんの体温が伝わってくるんだもん。
どうしよう。心臓がすごい速さで脈打ってるよ。
「……今日楽しかった?」
そっと手を重ねながら問いかける隼田くん。
急だったからドキッとしちゃった。
「う、うん。楽しかったよ」
もっと心を込めて言えばいいのに、この高さのせいでぎこちなくなってしまった。
今度はあたしが問いかけた。
「楽しかったよ。すごく」
その笑顔が眩しすぎて、目を細めた。
そっか。よかった。
大声出しちゃうし、泣くし、怖がって何もできてない今。
とても不安だったから。
無理してるんじゃないかなって。
でも、この笑顔は真っ直ぐでとても安心させてくれた。
隼田くんの笑った顔、すごく好き。