引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「好きだよ、舞美」
──っ!
い、いま……。
『舞美』って。呼んだ、よね?
隼田くんと目が絡むと離せなくなった。
ゆっくり近づいてくる顔。
それに合わせるように瞼を閉じる。
そして、優しいキスが落とされた。
それはゴンドラが頂上をほんの一歩進んだところで。
お互い離れると照れ笑いを浮かべあった。
……もっと触れたいな。
そう思ってしまうのって気持ち悪いかな?
「隼田くん」
「じゃなくて、名前で呼んでみて」
えっ、名前!?
な、まえ……。
い、言えない。恥ずかしいもん。絶対。
絶対、噛むと思うしっ。
「俺は言ったのに?」
「ゔっ……」
そ、そうだけどっ。
「俺だってあれで結構恥ずかったんだけど?」
もー、なんでそんな哀しそうな表情すんのー。
この表情って分かっててやってるのかな?
……隼田くんなら、やり兼ねないかも。
ジーッと熱い眼差しで見つめてくるから、どこを見ていのかわからなくなっちゃうよ。
うつむいたまま、手に力を入れた。
「と、と……うま……くんっ」
言った!言ってしまったっ。
呼び捨ては難易度高すぎだから、できなかったけどっ。
言った!
心臓がもたないっ。バックンバックンいってるよ。
「……よ、よく出来ました」
ぽんと頭にぬくもりを感じた。
繰り返しぽんぽんと撫でられ、全身に力が入ってしまう。
どうしよ。顔が見たいのに上げられない。
いま照れてるのかな?
顔は赤い?
どんな表情をしてるのかな?
「舞美、こっちみてよ」
「む、むりっ」
「なんで」
「だめ、まだ……っ!」
視界がグインと上にあげられた。
そこには隼田くんのドアップが。
両頬にはぬくもりを感じた。
隼田くんがあたしの頬に手をやって上を向かせたから。
「顔真っ赤」
そう言って笑う。
「は、隼田くんもじゃ……」
「名前、でしょ」
指摘されてしまった。
ク~。無理だよっ!
限界なんだよー。名前を口にするだけこんなにも真っ赤になるし、心臓が速くなるしで。
「……そんな目で見んなって」
フイっと顔を逸らす隼田くん。
機嫌を悪くした表情には見えなかった。
……顔が赤く見えるのはあたしの錯覚かな?
それとも、夕日のせい?
でも、耳が赤く染まってみえる。