引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「木下」
後ろからあたしを呼ぶ声に振り返った。
少しドキッとしたけど、あの時とは違う高鳴り。
「岩島」
今はもう普通に名前を呼ぶことができて、普通に会話もできる仲に戻った、新しい友達。
自ら歩み寄って近づいた。
「いいの?」
「え、なにが」
「や、彼氏?」
チラッとあたしの後ろに目をやって、申し訳なさそうな顔で聞いてくる。
あたしも隼田くんの方を見た。
北川くん達と同級生の女の子と一緒に写真を撮ってる。
作り笑顔だけど。
「たぶん、大丈夫」
だって隼田くんは優しいから。それに信じてるから。
「なに、その自信」
岩島はそう言ってプッと笑った。
この笑顔であたしは岩島を好きになったんだよね。
友達としてだけど、いまも好きだよ。
苦しかった片想いはこれからはいい想い出としてあたしの中にずっと残るんだろうな。
「今だから言えることなんだけど、あたし岩島を好きになってよかった」
ちゃんと伝えられてなかったから。
逃げてばかりで。
岩島は告白してくれた。
けど、それに対してあたしはただフっただけ。
自分が本当に伝えるべきだったことを言わなかった。
だから、最後の最後に言わないとって。
岩島は片耳を触った。
多分、照れてるんだと思う。
その仕草は変わってないなって思った。
3年間岩島に片想いして見てきたから。
「まじで馬鹿だよな、俺。……はぁ」
「ほんとだよ」
「うわっ、ひっでえ」
顔を合わせて笑いあった。