引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「お取り込み中、悪いけど」
「おわぁ!?」
肩を掴まれ後ろに引かれた衝動でマヌケた声を発した。
見上げると隼田くんが笑ってた。
……こ、こわいよ。目が笑ってないよ。
「何だよ、別に話したっていいじゃん。木下だって大丈夫って言ってたし」
「なっ!」
「ふーん。そうなんだ?」
あたしはとっさに岩島を睨んだ。
ほんと余計なこと言ってくれたなっ!
隼田くんがそのままの笑みであたしを見下ろす。
うっ。もう嫌な予感しかしないんだけど!
「あとで説明してもらおっかな」
出たあああ!S隼田くん!
目がこわい。笑ってない!
変な汗が背中をつたった気がした。
「そんな目で見んなよ。木下怖がってんじゃん。それにヤキモチ妬いてるんだろ」
岩島は少し口角を上げて言った。
こ、コイツはー!
またあたしを巻き込んでっ。
あと爆弾発言したよね?!
『ヤキモチ』って。
「悪い?ヤキモチ妬いて」
隼田くんが言った。表情何一つ崩さずに。
えっ。え、えぇえええ!?
……やばい、嬉しいっ。
顔が崩壊しそうっ。
「舞美、なんて顔してんだよ」
そう言ってコツっと頭をチョップしてきた。
それを見ていた目の前の人物は「うわぁ」って声をあげた。
最近の隼田くんはスキンシップが多いんだよね。
嬉しいんだけど、人前で平気な顔してやってくるから、ちょっと困ってるんだよね。
そう、今みたいに。
「はぁ。わかったよ、もう退散するからそんなベタベタしないでくれ。……じゃな!」
呆れながら、柔らかい表情をして岩島は手を振って方向を変えて行った。
その背中に小さく手を振った。
──ありがとう。またね。
「仲良くなれてよかったな」
上から聞こえる柔らかい声。
上を向くと隼田くんは前を見据えていた。
「うん」
やっぱり隼田くんは何もかもお見通しなんだ。
ヤキモチ妬きつつも、こうやって優しい。
隼田くんはかなり篤い人だと思った。