引っ越し先はあたしの隣⁉︎
体育館にはさっきよりも一段と少なくなっていた。
保護者はもういないに等しく、先生はまだ残ってる卒業生と喋ってる。
なっちゃん達の元へ戻ると「おっかえりー!」って笑顔で迎えてくれた。
みんなで体育館を出たところで、一人いないことに気付く。
「あれ、快斗は?」
隼田くんもいないことに気付いたみたいでなっちゃんに聞いた。
「あ、なんか電話掛かってきて、そのまま走って行っちゃったんだよね〜」
その様子はいつも感じが違ってたみたい。
なっちゃん曰く、『なんか開放されたような感じですごくキラキラしてた』って。
一体なにがあったんだろう。
「それねー、彼女だよ。たぶん」
ニコニコしながら傍にいた北川くんが言った。
へー、彼女さんか〜……っ!?
「「「えっ、カノジョ?!」」」
なっちゃん、隼田くん、あたしの声が見事に重なった。
「あれ、知らなかった?」
「おい、それいつの話だよっ」
「え、たしかー……、斗真がこっち来る前だったかな?」
「……知るわけね〜」
それを聞いてショックだったのか項垂れる隼田くん。
北川くんは隼田くんの肩をポンと置いて、なだめた。
そして、その手を隼田くんが振り払う。
相変わらずブレない二人の関係だなって思った。
「へぇ、まさか飯田に彼女がいたとはね」
「そうだね。びっくりしたよ」
だってそんな雰囲気してなかったし。
って、飯田くんを知ったのは最近なんだけど。
「それがね〜、ちょっとよく分からない関係なんだよね」
そう言ってカラ笑いをする。
なっちゃんが尽かさず北川くんに問いかけると、呆れるような答えが返ってきた。
北川くんは、『まだ彼女になってるのか分からない』と言ったから。
『彼女』と言ったのはあくまで北川くん自身が勝手に言い出したことらしい。
でも、『分からない関係』というのは本当みたい。
2年生になってしばらくすると、相談事を受けたらしい。
その時に言われた言葉が、
『一回りってさ、やっぱ遠いと思うか?』って。
その相手は一回り年上の人なんだって。
そして飯田くんとは幼馴染みらしい。
そっか。飯田くんは年上の女性に恋してるんだ。
ちゃんと結ばれるといいな。
心からそう思って願う。
「あ、噂をすれば!」
一段と明るい声が外に響いた。