引っ越し先はあたしの隣⁉︎
落ち着いたあたしをみて
「今度ちゃんと話すからさ。舞もちゃんと話してね?恋バナしよっ!」
って。
え、恋バナですか?!
いやいやいや、あたし恋してないんだけど。
ま、いっか。なっちゃんの話聞きたいし。
「うん!いっぱい話してね!」
もちろんっ!と親指を立てて前に突き出した。
「さ、応援しなきゃ、だね」
泣いたり、笑ったりしている間にもうとっくに時間は進んでいて
もうすぐチーム対抗リレーが始まろうとしている。
ああ、この競技で体育祭の結果が分かるんだ。頑張ってほしいな。
最後のチーム対抗リレーは3学年が主役。
男女2人ずつ、計4人で走る。
放送委員の合図と共に入場門から出てきたリレーの選手を見ると
その中には隼田くんがいた。
午前の部でちょっと話したときはハチマキをやっていなかったけど、今回はちゃんとしてた。
……かっこいいな。
隼田くんってね、すごく速いんだよ。頭がいい上に運動もいいってすごいよね。それに容姿も。
男の子にすごく羨ましいと思っちゃうあたしは変だ。でも、事実。
ボーッと隼田くんを見ていると彼もあたしに気付いて、視線が重なった。
その瞬間、彼はあたしに向けて指を差す。
それと同時に周りにいた女の子も騒がしくなった。
みんなは自分に向けられたと勘違いしてあちこちから黄色い声が聞こえてくる。
……なぜだろう。
こんな遠くからでも隼田くんを見つけ出せて、こんな遠くからでも何を言ってるのかが分かってしまう。
彼はあたしを指差して
『応援しろよ』
と口パクで言ったんだ。
あたしはただ頷くしかなくて。
でも精一杯の『頑張れ』を込めて、ガッツポーズをした。
すると彼は右手を口にもっていき、クスッと笑った。
キュッとなぜか胸を締め付けた。
そして、隼田くんは同じようにガッツポーズを返してきた。
……この感覚知ってる。前にも感じたことあるから。でも、それはもうあたしには必要ない。
でも、隼田くんを見ると苦しい。
だから、この感情の代わりに精一杯キミにエールを送るからね。
そう決意した時、第一走者が走り出した。