引っ越し先はあたしの隣⁉︎
午前の部が終わって昼食に入った。
今頃、美味しく食べてるのかなー。
ってなに考えてんの!?俺。
でも、幸せそうに食べてるのが目に見えるわ。
ははっ。キモッ俺。
「なぁなぁ、なにニヤついてんの?」
パンをかじりながら聞いてくるその興味津々な声は見なくてもわかる。
「ニヤついてねーよ。黙れ、真人」
と睨んでやると、「コッワー」って言いながら最後のひと口を食べてどっか行ってしまった。
アイツ、逃げたな……。
ま、アイツは応援団長も務めてるからその準備をしに行ったんだろう、と勝手に解釈した。
てか、そんなにニヤついてたのか?
あまり顔に出るタイプじゃないはずなんだけど……。
「なぁ、俺ニヤついてた?」
隣で弁当を食べてる快斗に聞いた。
「いや、ニヤついてない。てか、弁当に集中してお前のこと見てない」
はー、そうですか。
弁当に集中って、笑える。
俺は弁当に負けたのか、とちょっと悲しくなった。
ってのは、冗談として。
いま隣で弁当に集中してる快斗、飯田快斗(ハンダ カイト)は真人と同じクラスで友達。
転入した日の放課後に俺が来たって知った真人が即俺のところに駆け付けてきた。で、その隣にいたのが快斗だ。
初めてみた快斗は黒髪のメガネで、無表情なやつって印象だった。
でも、話すといいヤツってことがわかった。
そう、今みたいに変なこといきなり言うし、冷静に突っ込んでくるし、ほんと面白いヤツなんだ。
「斗真……見過ぎ。もう始まるぞ」
そう言いながら時計を指差す。
どうやら快斗をずっと見てたらしい。
あと数口のパンを食べ、グラウンドに向かった。