引っ越し先はあたしの隣⁉︎
あーあ、始まってしまった。
あちこちから「隼田ー!」とか「がんばれー!」とかもう聞きたくない言葉が聞こえてくる。
俺の気持ちも知らないで。
なんでこんな期待されてんの?!ほんと意味わかんない。
あー、気持ち悪くなってきた。
ふと、自分のチームの席をみた。
あ。
一番前の席に座ってこっちを見てる木下がいた。
……なんでだろう。なんか落ち着いてきた。
今まで、心臓バックバクだったのに。
木下、応援してくれるかな。
応援してほしい、な。
俺は木下に向けて指を指した。
なんで、周りがざわつくんだよ。
俺は木下に向けてんの。
てか、木下も分かってんのか?
でもなんとなくだけど、木下は分かってる気がした。
だってずっと俺を見てるから。逸らさずに。
……なんか恥ずいかも。
じゃあ、これも分かるかな。
こんな事大きな声で言うのはもっと恥ずかしいから
口パクで言った。
『応援しろよ』と。
……フッ。
分かるわけないよなー。別にいい。
木下が見てるだけで落ち着くから。
すると木下は何度も何度も頷いていた。
え。分かったの?
さらに、ガッツポーズまでしてきた。
え、なにこれ。やばい。
俺は右手の甲を口もとにもってって笑みをこぼした。
いや、ニヤけた。
なんか、可愛かったから。
ほんと俺ヘンだな。なんなのこの感情。
ありがとな、木下。
俺、頑張れる気がするよ。
だから俺もガッツポーズを真似して返した。
──パンッ!
スタートの合図が聞こえ、リレーが始まった。