引っ越し先はあたしの隣⁉︎
木下の元へ来た俺はちょっと強く言葉を発していて、別に謝って欲しくて来たわけじゃないのに、謝られてしまった。
あー、なんで!なんかイラつく。
「いや、謝って欲しくて聞いたわけじゃないんだけど。なんか木下に目、逸らさられたらなんか傷ついた……!」
やっべ。
俺は口に手を当てて「……いや」と誤魔化し、木下から目を逸らした。
口が滑った。つい。
しばらく沈黙が続く。
あー、転入した当時もこんな感じだったな。懐かしい。
あ、今がチャンスなんじゃ……?
俺はこの沈黙を破り、話はじめた。
リレーの時に聞こえた木下の大きな声援に助けられたこと。
そして、伝えたかった言葉を。
言い終えた俺は木下の頭をぽんぽんと撫でた。
やべ、この髪気持ちいんだけど。
クセになりそう。
って俺ヘンタイじゃん。
そう思いながら手を離そうとするけど、やっぱり気持ちくていまだに離せず、ずっと触れたままでいた。
──バシッ。
「あの、いつまでこうしてんですか!?もう、止めてっ」
そう言って振り払われてしまった。
つか、なぜ敬語?
「なに、恥ずかしがってんの?」
つい、からかいたくなって聞いてみた。
しばらく無言で下を向いてる木下を見ていると、ポケットからスマホを取り出し素早く打ってバッと顔を上げた。
そして「じゃ」と短く言って足早に俺の横を通り過ぎ去っていった。
去って行った方をみて自然と笑みがこぼれた。
言いたいこと言えたし、俺も帰るか。
校門へ歩き出した。