引っ越し先はあたしの隣⁉︎






「あ、あの……!」


その声に振り向く。



「ぁ、えと。た、体育祭のときはありがとう」


え、体育祭?



「応援してくれてたみたいで……」


視線を外しながら言う。



ああ、あの時か。

って『応援してた』なんて言っちゃったんだよな。



「あ、うん」


あの時のこと思いだしてつい素っ気なく返してしまった。




…………。

しばらく沈黙。


木下はこの沈黙をどう思ってるか知らないけど、俺はこの沈黙というか空間は嫌いじゃない。



なんか落ち着く。



それは木下がまとう空気なのか、ただ単に好きだからなのか。



「隼田くんたちは何してたの?」

と沈黙を破ったのは木下。



何してたって……。



「何してたと思う?」

正直に答えてやればいいものを俺はニヤリとしながら言った。



「っ……し、知らないよ!」


なにこの反応、なんか可愛いんだけど。



「ふぅん、気にならないんだ」

「全っ然!気になんないから!」


ふん、と顔を背ける。



しょーがないな。


「勉強してた。木下は?」

「え!べ、勉強!?」



まー、あのメンツじゃ驚くわな。


「じゃあ、北川くんも勉強してたってこと?」


なんで真人のこと……。



「まぁ」


やべ、ちょっとイラっときて素っ気なすぎた。


それを聞いた木下は、「へー」と笑っていた。



なにこの笑った顔。

なんかムカつく。









< 52 / 237 >

この作品をシェア

pagetop