引っ越し先はあたしの隣⁉︎






なんでそんな驚いた顔してるの?


「え、どうしたのって隼田くんこそ」

「……おまえ、気付いてないの?」


スッと隼田くんの手が伸びてきて、あたしの頬に触れた。



あ。


「涙、でてるから」

今触れられて気付いた。


あたし泣いてたんだ。……なんで?


「どした、なんか悲しいことでもあった?」

「な、ないよ!ごめんね、何でもないよ。たぶん目にゴミが入っただけだよ」

と笑ってみせた。


とっさに出てきた嘘が『目にゴミが入った』だった。

こんな嘘すぐわかるに決まってんじゃん。

だって、涙に気付いた人が言ったんだよ。

ほんと嘘つくの下手だよね。



でも、隼田くんは「そっか」だけで他に何も言わなかった。



これも隼田くんの優しさなのかな。


……今聞かれてもたぶん答えられないと思うけどね。



隼田くんを思って泣いてました、なんて言えないよ。



「あのさ、何でとかは聞かないけどさ……、話聞くぐらいならできるから。いつでも話し相手になってやるよ」


あたしの好きな笑顔で言った。


そして、「友達だからな」と付け加えた。


そっか、友達なんだ!あたし達。


友達でも全然いいよ。心は近くにいれるなら。



「うん、ありがと」

隼田くんに笑顔を向けて言った。








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