引っ越し先はあたしの隣⁉︎
「終わったあぁああーーー!」
ただいま、午後15時。
いま感動してます!
だって、数学を今日一日で終わらせちゃったんだもん!
それは隼田くんのお陰なんだけどね。
「隼田くん、ありがとう!」
「おー、よかったな。終わって」
俺も終わったし、と付け加えて笑った。
あたしもつられて笑う。
……もうそろそろ帰ろっかな。
「あ、もう帰ろっかな」
「あー、そっか。じゃ──」
隼田くんが最後まで言い終わる前にスマホが鳴った。
自分が聞いたことのないアップテンポな曲調の着信音。
すぐに隼田くんのだと分かった。
わりっ、と言って電話に出る。
「……なに。なんか用?」
ン?
……いまの声は隼田くんのもの?!
うん、隼田くんだよね。目の前にいるんだし。
さっきまで話してた声とは打って変わって感情のこもってない低い声で話している。
すると、
「っ!はあ!?おま、何言ってんの!?ムリ、来んな!」
と大きな声が部屋中に響いた。
隼田くんは電話を切ったみたいで「ごめん」と優しい声で言った。
あ、いつもの隼田くんだ。よかった。
電話の相手はたぶん隼田くんの苦手な人なんだろう。
……かわいそうに。
──ピンポーン!ピンポンピンポン……!
え、誰。
ちょ、ちょっと鳴らし過ぎじゃない?!
「はぁー、誰だよ。木下ごめん。ちょっと待ってて」
とダルそうに言って玄関へと向かって行った。
誰なんだろうね。あんなに鳴らさなくてもいいと思うんだけど。ちゃんと聞こえてるし。
「おまっ!なんで!?」
玄関の方から隼田くんの驚いた声が聞こえてきた。
え、誰。
戸は閉まられてるから、何言ってるのかハッキリ聞こえない。
でも、相手は『男の人』ってことはハッキリ分かった。
「よ!斗真!来ちゃった!」
「よ!じゃねぇーよ!サッサと帰れ!」
「あ、なに。誰かいるの?」
「居るっちゃいるけ……!」
「おっじゃましまーす!」
そんなやり取りを聞いていたら思いっきり目の前の戸が横に開けられた。